平安建都1200年記念事業の一環として、「歴史の継承と飛躍」をテーマに整備された梅小路公園は、平安京の朱雀大路に沿って東に位置し、敷地の一部は平清盛の屋敷跡。こうした時代的背景をふまえながら、この公園の核として「平成」という時代性を映す「朱雀の庭」を作庭することになりました。京都の「緑文化」を発信する拠点としての役割を担う、新しい様式美を創造する挑戦でした。
従来の庭づくりの多くは「建物中心」で進められることが多いのですが、「朱雀の庭」は「庭園中心」で、そこに建物が降りてきたというイメージで設計されました。回遊式庭園ならではの楽しみ方を満たしながら、建物の内側からも楽しめる構成でした。
作庭作業は、一本の樹木、一つの石の果たす役割をイメージし、ふさわしい素材を探し歩くことから始めました。素材は、庭の生きた主役。樹種の組み合わせや位置、枝先の姿に至るまで、すべてに「こだわり」ました。
自然への憧憬のシンボルとして構成した「滝」は、従来の手法と違えて、滝石を屏風状に組み上げました。石と石との間にはあえ屏屏て隙間をもうけて奥行き感を与えました。滝壺から石の間をつたって流れる水は、自然のスケール感にきわめて近い情景に仕上げています。
石組みは庭づくりにおいて重要な構成要素ですが、「朱雀の庭」の滝では、石組みよりもむしろ植栽を優先させました。紅葉の枝の線や流れに添うように石を配し、その石の隙間から幹が伸びたように構成することで、石と樹が馴染み、もともとそこで育ったかのような景を生み出す工夫を凝らしています。