「技能者」と「技術者」との組み合わせが、庭の出来映えの鍵を握ります。庭は、「空間構成」と「細部手法」との組み合わせだからです。
造園家は「技術者」です。予算やスケジュールも含めて、空間全体をプロデュースする能力が求められます。「ここにどんな世界を描けばクライアントを満足させられるのか」を考えるのが技術者。技術者の描いた理想の世界を具現化するには、優れた「技能者」の力が不可欠です。細部は、その道一筋の熟練の技と経験を積み重ねた「職人」に委ねます。技術者のプラントは別に、匠の技でしかつくりえないものがあるからです。
とはいえ、たとえば陶器のように、どんなテクニックを用いて、どんな形の器に仕上げるかを、技能者が一人で決定することはありません。技能者が庭を設計すると、往々にして自分の好みや得手に偏り、必然性のある構成美を創出できなかったりするからです。
その逆に、技術者が理想だけで突っ走ると、コンセプトは立派でも細部への配慮が抜け落ちて、結果として「収まり」の悪い庭になります。石のわずかな傾きや樹木の向きなどが、庭全体の仕上がりに影響するからです。技術者といえども、技能を理解していなければ、全体をプロデュースすることはできないといえましょう。庭は、お施主さんと作庭者との共同作品だという言い方ができます。