庭園の主たる素材は、植物と石。そのように数百年も変わらぬ素材を使いつづけている日本庭園とは、いったいなんなのか――その本質を突き詰めると、「素材の美」を超越し、素材を組み合わせる「構成の美」に辿り着きます。
西洋の庭が日本の庭と根本的に違う点は、植物をモノとしてとらえていること。花の盛りをいつでも楽しめるよう、頻繁に植物を植え替えます。そのローテーションを維持するストック・ヤードにも手間とお金をかけるのが、西洋の庭づくりの特徴です。
いっぽう日本では、枝間にこぼれる陽射し、春の芽吹きや蕾の膨らみ、色づきはじめた紅葉や木の実、老いてゆく古木も含めて、庭全体に漂う気配から季節の移ろいを感じとる趣向です。
質の高い素材と優れた技能者に恵まれた京都では、素材と細部手法を組み合わせるだけでも、そこそこ美しい庭はできます。しかし、庭の価値は「構成美」で語られるべきもので、間違っても「素材の陳列」であってはならないはず。
庭という舞台でくりひろげられる物語のなかで、個々の素材がふさわしい役割を果たしうるよう、造園家は一つひとつの植物や石の個性を見極めて配役します。「景をつくる」とは、物語の創造にほかならないのです。