京都では、平安、鎌倉、室町、桃山時代、そして現代においても、それぞれに優れた庭園がつくられています。その庭は、時間と歴史という価値が付加され、現在は京都の文化を代表する歴史的な遺産として、伝統的な庭園技術とともに継承されています。
しかし、金閣寺や銀閣寺のような庭を、いまの時代に新たにつくろうとすると、その斬新さゆえに批判が浴びせられるかもしれません。生きて時代性を反映するのが庭です。それぞれの時代にはその要請に応えうる様式美があり、現代の庭づくりには、現代にふさわしい様式美が求められるのです。
庭園の様式は、「象徴」、「縮景」、「自然」の三つに分けて考えることができます。この違いは、私たちの暮らしのありようと密接に関わっています。
かつての人間の営みは、雄大な自然のなかの限られた範囲に限定されていました。手つかずの自然に恵まれていた時代には、宗教的な世界観を象徴的にとらえた庭や、各地の名勝地を模した縮景の回遊式庭園などが好んでつくられました。
自然の乏しい環境に暮らす現代人は、限りなく自然に近い空間、生命の輝きや季節の移ろいを身近に感じられる庭を求めているようです。簡単には手に入らないもの、失われてしまった自然への憧れを、庭という空間に託しているのかもしれません。
その理想の世界を「美の世界」へと昇華させることが、私たち造園家の使命となっています。