できあがった庭を見たお施主さんが、「あぁ、いいな」と思ってくださるかどうか、理屈抜きに心を素直に預けていただけるかどうか──それが評価のすべてです。
野山に出かけた私たちが、その景色に「心地よさ」を感じるのは、樹木や石たちが、「いまここに生きている」という生き生きとした姿で、あるべき場所に収まっているからです。長い時間をかけてようやくできあがる風景を、人間の手でゼロからつくりだそうというのですから、私たちは真摯な気持ちで自然に学ぶほかありません。
森を散策していると、息をのむほどに印象的な風景に遭遇することがあります。「この景色を再現したい」という夢が叶うのは数十年に一度のことですが、そうした感動を自分のなかに蓄積してゆくことで、感性は磨かれます。